乱流燃焼場のレーザー計測

1.研究背景

直接数値計算 (DNS)を用いると高精度に乱流燃焼場のシミュレーションを行うことができますが、莫大な計算コストから、計算可能な領域の大きさに制限があります。一方で、実験では、取り扱える物理量に制限はあるものの、現実的なサイズの燃焼器を対象とすることが可能です。このように、DNSと実験の両側面からのアプローチは、乱流燃焼研究において非常に重要です。乱流燃焼場の計測では、ステレオPIVや下で説明する化学種の平面レーザー誘起蛍光法(PLIF)のような各種レーザー計測を用います。

本研究室の実験室の一部

2.平面レーザー誘起蛍光法(PLIF)

燃焼器の概略(右)と平面レーザー誘起蛍光法(PLIF)で計測したOHラジカルの空間分布(左)

一般的な燃料の燃焼に関する化学反応は数十から数百、数千に及びます。これらのうち、反応が盛んな領域(反応領域)のみに存在する中間生成物やラジカル(CH、CH2O)や、既燃領域に存在するラジカル(OH)などを計測することで、瞬時の乱流火炎を可視化することができます。これらの計測に用いられる手法が平面レーザー誘起蛍光法(PLIF)と呼ばれています。平面レーザー誘起蛍光法では、特定の波長をもつレーザーシート光を燃焼場に瞬間的に照射し、対象とする化学種(ラジカルや中間生成物)を励起します。励起された分子のエネルギー準位が元に戻るときに発生する蛍光を高感度カメラで撮影することで、化学種のレーザーシート内での存在確立分布を計測することができます。

3.本研究室で得られた計測結果の例

ステレオPIVと化学種のPLIFを組み合わせることで、乱流燃焼場の速度場と化学種場(スカラー場)を計測することができ、これらの情報はDNSと直接比較することが可能です。このように、本研究室ではDNSと実験的手法の短所を互いに補い合うことで、より包括的な研究活動に取り組んでいます。

ステレオPIVを用いて計測した旋回乱流燃焼場の3次元平均速度場(ベクトル及び流線)とOH PLIFから求めた平均火炎面の分布(赤い等値面)